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上記のように、電話、テレックス等による承諾について発信主義がとられる場合でも、電話回線の故障により承諾の意思表示が申込者に伝達されず、また被申込者がそのことを知っている場合には、契約は成立しない。電話回線の故障の場合には、申込者には承諾の意思表示が伝達されず、被申込者もそのような事態を知ることが出来る。しかし、テレックスでは、受信者側のテレプリンターの用紙が切れていても、発信者側のテレタイプは自動停止することなく、メッセージ送信を続けるので、発信人はメッセージの伝送が完了したと信じ、他方、受信人は当該メッセージの発信されたことを全く知らないというような事態がしばしば生じたことを考え合わせると、発信主義の原則による場合、申込者にとって契約成立に関する不確実性が存する。到達主義の原則の下では、このような危険発生の可能性は生じない。申込者の立場から、発信主義による不確実性を回避するために、テレックス、EDI等による承諾について、到達主義または了知主義を明示的に合意しておくことが望ましい。
4.EDIによる契約成立の時期・場所に関する明示的合意の必要性
(1)各国の法律原則の不一致
上記のように、電話、テレックス等の即時的通信手段による承諾について、英国の判例および学説は到達主義をとっており、一方、米国では、学説は理論的に到達主義を支持しているが、判例は発信主義を採用する傾向がみられる。また、わが国では、隔地間の契約成立について、申込の有効期間内に到達することを条件として(民法第521条)、発信主義がとられている(同第526条)。しかし、電話、テレックス、その他これに類似する即時的通信手段による申込の承諾は、対話者間の場合と同様に、到達主義が適用され、これが申込者に到達した時に効力が生ずると考えられる。ドイツ民法は、申込および承諾の効力発生について、通信手段の種類に関係なく到達主義をとっている(ドイツ民法第130条)。
(2)1980年国連売買条約の契約成立に関する条項
1980年国際物品売買契約に関する国連条約においても、申込および承諾の効力は、いずれもこれが相手方に到達した時に生ずるとし(同条約第15条および第18条)、契約は、申込の承諾が本条約の規定に従って効力を生じた時に成立すると定めている(同第23条)。また、「到達」について、「申込、承諾の通知、その他の意思表示は、名宛人に口頭でなされるか、その他の手段で個人的に名宛人へ、あるいは、営業所または郵送先(mailing

 

 

 

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